先端映像統合制作のためのネットワークシステムの研究

高木真一 准教授  早稲田大学 国際情報通信研究センター
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HD24P対応VTR(HDCAM-SR) HD24P対応VTR(HDCAM-SR) バイトラックス ディスクレコーダ(HDR) バイトラックス ディスクレコーダ(HDR)

映画を制作する行程はかなり以前からディジタル化されてきており、ハイビジョンのVTRを活用したものや、ディスクレコーダーで収録されたもの、あるいはフィルムで撮影した後にスキャナー等でディジタル化し、その後の行程をすべてディジタルで進める、ということが日常的に行われている。

そうした背景の中で、本庄市の早稲田大学芸術科学センターで篠田正浩監督の『スパイ・ゾルゲ』が制作された時に、VFXプロデューサーの大屋哲男さんが非圧縮HDディスクレコーダーでの撮影を前提とした映画制作の新しいワークフローを開発し、実践に移された。その時にさまざまな課題が見えてきたのだが、中でも映像制作には大容量のデータが発生するので、保存・伝送・整理などの管理手法をどのようにしたらよいか、という問題があった。特に、映画制作の拠点で、撮影スタジオと編集スタジオが離れた場所にある場合、データを送らなければならないのだが、『スパイ・ゾルゲ』の時はハードディスクを物理的に運んだため大変危険であった。

大量の画像データを送るネットワークを

それ以降、樋口真嗣監督の『ローレライ』の制作時には、大屋プロデューサーから、とにかく大量の画像データを安価に送れるネットワークシステムがほしい、しかもそれは単に実験的に作って一回で終わってしまうようなものではなく、継続的に利用できる現実的なシステムにしたい、ということであった。ちょうどその頃Bフレッツが登場し、普及してきた時期だったので、それを何本か組み合わせることで、大きなコストをかけずに実現できるのではないかと考え、私を中心にGITSの修士の学生の手伝いも得て、システムの構築に着手したのである。

最初は、撮影を行う東宝スタジオと、編集・合成を行う本庄市の芸術科学センターの間の二拠点だけで接続するということからスタートした。システム構築の目標は、撮影したデータを翌日の午前中くらいまでには芸術科学センターに届けるということで、約12時間程度で伝送できることであった。

『ローレライ』の場合では、HD、10bit、RGB形式の連番ファイルが大量に発生し、一日の撮影分では、300GB〜400GBくらいになる。これを単純に12時間の伝送時間で割ると、約65Mbpsになる。これが送らなけれならないデータのボリュームで、このレベルであればなんとかBフレッツを束ねることで可能になるだろうというところからスタートしている。実際に使っている回線も、本庄市にはBフレッツしか選択肢がないということもあって、3本組み合わせて安全に伝送したいという要望にも応えるために、IP-VPNとして一番安価なNTT東日本のものを使用した。

大量の画像ファイル群をファイル単位で複数回線(VPN)に振り分けて送信。

実際に出来あがった伝送システムでは、東宝スタジオと芸術科学センター両方に送受信のためのサーバを設置し、その間を3本の回線で結び、両拠点のサーバ間でデータのやり取りを行った。最初の段階ではまだ両拠点の中がネットワーク化されておらず、オペレーションの事情などもあって、ディスクレコーダーから吐き出されたデータを、物理的にハードディスクを持ち運んでサーバまで届ける、という非常に危険なことも行っていた。3つの回線に分けて送るという部分では、とにかくフレームごとに1ファイルが発生し、連番ファイルが大量に存在するため、ネットワークレベルというよりもアプリケーションレベルで、それぞれのファイルに対して空いている回線を見つけてどんどん送り出していく、という考え方でソフトウェアを作成した。

また、実際に使用するという観点から、どういうサーバにインストールするかということも課題であった。ディスクレコーダーはWindows2000であり、実際に映画制作、CG制作に携わっている人の多くはMacintoshを使用しており、我々が大学の研究室でシステム開発をする際はUNIX系のOSであることが多い。この三つをうまく満たすことが出来るようなものとして、結果的にはMac OS X Server 10.3を使用することになった。理由としては、WindowsのFAT32フォーマットも認識でき、Macintoshであり、UNIX系であることが挙げられる。